軽バン、軽ワゴン、軽トラにバイクを積んで
「拓ちゃん、これだよ。立派なクルマを買わなくても、軽自動車にバイクを積んでレースができるって、発信した方がいいよ」
5年ほど前にライディングスポーツ本誌で始まった、初心者おじさんレース参戦記『五十にして立つ』は、GSX-R125編の以前に、タイのメーカーであるGPX製のバイク、デーモンGR200Rのワンメイクレースに筆者市川が参戦する、というのが最初の企画でした。そのワンメイクレースは、桶川スポーツランドで開催されている中型スポーツバイクのシリーズ戦、SSキラーズに併催されていました。
その初戦の後、パドックで軽ワゴンにレーサー仕様のGR200Rを積み込んでいるときに、昨年、ご本人の活動の集大成とも言うべき写真集『ROADRACING』をリリースした、2輪レースカメラマンのレジェンド赤松孝さんに、激励されるように声をかけられました。
筆者は90年代にモトクロスに熱中し、そのころはハイエースの特装車にバイクを2台積みっぱなし。近所に買い物に行くのもそのまま乗り回していました。ハイエース、キャラバンの程度の良い中古車が、現在の軽自動車並みの価格で購入でき、ガソリンもレギュラーは1リッター90円以下。当然軽油も安く、バイク好き、レース好きの若者たちが、躊躇なくトランスポーターを所有できた時代でした。
時は流れ2020年、一度はバイクと離れていましたが、サーキット走行に目覚め、トランスポーター購入を考えたとき、ハイエースやキャラバンの相場はまるで高級乗用車のような価格になっていました。今さら高額なローンを利用したくはないし……、そう考えていると、都内を移動中、街道沿いの中古車店に、手ごろな価格の軽ワゴンが並んでいるのを発見。その場で購入を即決。数日後には納車となり、トランスポーターとして活用を開始しました。
現在、サーキットで周囲を見渡すと、至れり尽くせりと言った感じの豪華なハイエースも目立ちますが、軽バン、軽ワゴン、軽トラでもバイクを運んでいるライダーも見かけます。筆者が断続的に参戦している、関東ロードミニ選手権にも軽自動車ユーザーが多く、今回は筆者と同じインポートミニクラスで、GSX-R125を軽バンに搭載して参戦している2名の選手を取材しました。
軽トランスポーターの愛用者たち
サーキットで快適に過ごすためのアイテムを詰め込んで

長谷 薫さん(埼玉県在住)
参戦レース:関東ロードミニ選手権(インポートミニフレッシュマンクラス)
トランスポーター:ホンダ N-VAN
「自分もリターンライダーなんですが、筑波サーキットや桶川スポーツランドに見学に行ったときに、軽バンや軽ワゴンにバイクを積んでいる人が意外に多くて、それなら、と思ってN-VANを選びました。ハイエースがいいとは思いますが、10万キロ走っているような中古車でさえ、100万円以上もするというのがね……。軽バンはスペースは限られますが、棚を作ったり、いろいろと収納場所を考えたり、工夫するのが楽しいです。サーキットに来たときに、周囲の人のトランポを見せてもらうと勉強になります。ただ、油断すると道具が増えていくので、そこはコンパクトにしたいですね」
「我々にしてみたら軽バンにバイクを積んでいるのは普通ですが、そういうことを知らない人のところにこのクルマで行くと、『バイクが積めるんだ!』と、驚かれますね」


仕事道具もバイクも車中泊も
山田 克(まさる)さん(東京都在住)
参戦レース:関東ロードミニ選手権(インポートミニMIDクラス)、白糸ライディングスポーツカップ等
トランスポーター:トヨタ ピクシスバン
「GSX-R1000で、ツーリングやサーキット走行を楽しんでいたんですが、2023年からGSX-R125で、桶川スポーツランドや、山梨の白糸スピードランドのライディングスポーツカップに出るようになりました。関西の堺カートランドや、SUGOの西コースにも遠征します。もちろんこの車でね」
「軽バンを選んだ理由は、単純にランニングコスト、維持費の安さですね。新車で購入して、費用は総額150万円くらい。普段は建設現場で防水加工の仕事をしていて、仕事道具も積みます。道具や材料が少なくて済むときは、現場にGSX-Rを積んだまま行ったりしますね。燃費は夏場のエアコンの使用頻度などで変動はありますが、リッター10kmから14kmくらい。車中泊もしますが、就寝時の我慢と工夫は必要ですね」


年季が入った車両はこまめな整備でいたわりながら

市川 拓(千葉県在住)
参戦レース:関東ロードミニ選手権(インポートミニフレッシュマンクラス)、SUGOロードレースシリーズ
トランスポーター:ホンダ バモスホビオ
さて、筆者のトランスポーターはどうなのかというと、前述のとおり、5年前に街道沿いの中古車店で即決購入した、2009年型のバモスホビオ。購入価格は、屋根の色あせなどがあり、走行約5万キロで乗り出し30万円。先に紹介した二人のクルマに比べるとかなり年季は入っていますが、こまめなオイル交換と整備をして、いまだに頑張ってもらっています。



軽バン、軽ワゴンには、125ccクラスから1000ccのスーパースポーツまで、各々多少の工夫で積載可能ですが、荷物を積みすぎると当然燃費は悪く、制動距離が伸びるという危険もあります。今回取材したユーザーのように、様々な工夫をすることが重要だと実感。軽自動車の車両価格や税金、保険料の安さは大きな魅力です。筆者としては、何より軽自動車は、どこに出掛けるのも気楽なのがいいと思っています。いきなり数百万円のトランスポーターを用意しなくても、サーキット走行やローカルレースへの参加は可能なのです。レーシングライフも工夫次第だと思います。
著者紹介
市川 拓(いちかわ たく)
1970年東京生まれ。20代のころから立体オブジェを制作し、映画やドラマの美術セットや撮影用の怪獣の着ぐるみも手掛ける。90年代にWGP250ccの畠山泰昌選手のデザイナー兼ヘルパーとしてグランプリに同行した。モトクロスレースの経験あり。
撮影
石崎伸樹
協賛各社
アライヘルメット
ウエストパワー
MHプロダクツ
スズキ株式会社
クラブサークル
J-Trip
STOMPGRIP有限会社エム
ダブルオーグラスギア
hit-airプライドワン
ブリヂストン
ベスラ株式会社
ベビーフェイス
ベルレイオイル
マーキュリープロダクツ
MotoUP桶川スポーツランド
