人生3度目のレインタイヤでレース参戦!
レースの約2週間前、練習中に突然転倒
11月の強風のSUGOの練習から、いよいよ12月、桶川スポーツランドの小排気量のシリーズ戦、関東ロードミニ選手権の最終戦を迎えることとなった筆者市川。
全日本ロードレースやMotoGP、各カテゴリーがシーズンオフを迎え、初冬の桶スポにはサンデーライダーに混じり、連日のように名だたる国内外のトップライダーが訪れ、練習車を走らせています。
市川も走り込まねばと、12月の第1週の平日に、軽ワゴンにGSX-R125を積んで桶スポに向かいました。
天気もよく、午前から走行を重ね、一応ベストに近いタイムを出すことができました。15時を過ぎ、その日最後の30分の走行へとコースイン。
ところが数周後、1コーナーに進入すると、視界に突然オレンジ色のものが。エアバッグベストが作動し、気室がヘルメットのシールド辺りまでせり上がってきたのです。
「転んでしまった!」
アプローチで突然フロントタイヤのグリップがなくなったような感じでした。すぐに立ち上がり、倒れているライディングスポーツ号を起こすと、左側のステップとハンドル周りが多少損傷した程度。エンジンもかかり、自力でピットに戻ることができました。
『五十にして立つ』GSX-R編をライディングスポーツ本誌で開始してから今年で4年目。練習中にコースアウトは何度もしましたが、幸運なことにバイクを倒してしまったことはなく、周囲から、「モトクロス出身だから、グラベルの方が得意だろう」と、冷やかされることも。今までGSX-Rでのレースはすべて無事完走していました。10月の雨のレースでもドライタイヤで奮闘し、妙な自信がついていたのも事実。慢心もあったと思います。
この日は2026年のMoto3のシートを獲得した、三谷然選手が練習車で精力的に走行を重ねており、「この時期の桶スポは、走行中すぐにタイヤが冷えて、フィーリングの変化が大きいんです。気をつけた方がいいですよ」と、いつまで経っても初心者レベルのおじさんに、ありがたいアドバイスを授けてくれました。
レースに向けてエアバッグベストを自分でリペア

市川が使用しているhit-airのエアバッグベストは、首周辺のアクシデントに特化した『NW改』。街乗りでも普段着の上に装着可能な製品で、さらにそれをレーシングスーツメーカーのプライドワンがモディファイした仕様です。80km程度からの転倒でしたが、転倒後も体に痛みがほとんど残らず、首周りへのインパクトの軽減の効果はとても大きいと実感しました。
そしてこのエアバッグベストは、ボンベ交換等、再使用のためのリペア作業がユーザー自身で可能なのです。

五日後、気を取り直して再び桶スポへ出向き、レース前週の水曜日恒例のスタート練習に参加。
実は市川、昨年から桶スポで出場した数レースで、2本指のモトクロス式クラッチミートと、昨年から使用しているウエストパワーの膨張室付きのマフラーのレスポンスも相まって、スタートダッシュにかなり手ごたえを感じていました。
この日もスタートの感触を確認し、新品のドライタイヤの慣らしをして終了。しかし、12月14日の天気予報には、不穏な雨マークがついていたのです。
朝から冷たい雨となった桶川スポーツランド
迎えた関東ロードミニ選手権のレース当日、予報どおり朝から冷たい雨。
この日もいつものように、市川にとって最強のサポートチームが桶スポに集結。ロードレース出身で、今年伊勢崎オートにデビューし、17勝という快挙を成し遂げた佐々木光輝選手のお父さん、司(つかさ)さんがわざわざ仙台から。そして埼玉在住のJP250ライダー、醍醐選手親子が駆けつけてくれる予定だったのですが、醍醐侑希がインフルエンザでダウン。お父さんが単独で来てくれました。いずれにしても、このお二人のお陰で、素人に毛が生えた程度の市川が今回も心強くレースを走れます。


しかしこの日は予報どおりあいにくの天気。弱い雨が降り続き、さすがに今回は市川も前日にレインタイヤを準備。2022年のSUGO選手権の前日練習、同年のライディングスポーツ主催の、雨の筑波マイペースラン以来、人生で3回目のレインタイヤでの走行となりました。

冷たい雨の中、公式練習、予選と走行しましたが、水溜りがあるような路面であっても、バイクはねらったラインを走り、タイトコーナーであれば、探っていけば膝を擦ることも可能。改めてレインタイヤのすごさを思い知りました。
ただ、タイヤの限界がまだ完全に分からない。右の高速の5コーナーも、ドライに近い感じで走っていいのか? などと考えているうちに予選は終了。予選出走11台中6位のタイム。人生初の2列目グリッドを獲得しました。

午後にかけても冷たい雨は止まず、決勝前のインターバルに、スーパーヘルパー、佐々木さんが自宅で仕込みを完ぺきに行ない、パドックに持ち込んだ特製のとん汁を振る舞ってくれました。身にしみる温かさとおいしさ、午後のレースを走るための心のエネルギーが満タンになりました。

決勝は2列目グリッドからスタートダッシュを決めるが…

いよいよ決勝。いつもより少し1コーナーが近く、シグナルも見やすい6番グリッドから。赤ランプ、エンジン回転、クラッチの2本指に意識を集中し、ブラックアウト! ダッシュが決まった。

自分の視界にはフロントロウの選手が2台だけ。さあ1コーナーへ、と思ったら、イソゴン選手こと磯子さんがインに切り込んできました。このコンディションでもさすがの勇気。

感心している場合でなく、丁寧に攻めて追走しなければ…。そう思えば思うほど、走りが硬くなり、数周ごとに後続の選手に次々パスされます。

市川にはあのときのような潔さがなく、走りが硬くなってしまった
攻めたい気持ちと転倒したくない思いが交錯し、あっという間の10周を終えてチェッカー。インポートミニフレッシュマンはエントリー13台、決勝出走10台。結果は8位でした。

練習、予選を走行後にレースを棄権した選手もいましたが、その決断を筆者は尊重します。レインタイヤがなければ休んだっていい。持っているなら楽しめばいい。趣味のレースはそういうものだと思います。
レース後にライバルのイソゴンさんは、「レインタイヤは自分もほとんど初めて。でも、いけると分かったから攻めた」と話していました。自分はレインタイヤを安全の担保という形でしか活用できませんでしたが、イソゴンさんは武器として使い、あと少しで表彰台だったのです。
これで筆者市川の2025年のレースも終了。寒くても雨であっても、駆けつけて支えてくれる醍醐親子や佐々木さん、そしておじさんになってから得た、かけがえのないレース友だちに心から感謝いたします。

著者紹介
市川 拓 (いちかわ たく)
1970年東京生まれ。20代のころから立体オブジェを制作し、映画やドラマの美術セットや撮影用の怪獣の着ぐるみも手掛ける。90年代にWGP250ccの畠山泰昌選手のデザイナー兼ヘルパーとしてグランプリに同行した。モトクロスレースの経験あり。
撮影
石崎伸樹
市川 拓
協賛各社
アライヘルメット
ウエストパワー
MHプロダクツ
スズキ株式会社
クラブサークル
J-Trip
STOMPGRIP有限会社エム
ダブルオーグラスギア
hit-airプライドワン
ブリヂストン
ベスラ株式会社
ベビーフェイス
ベルレイオイル
マーキュリープロダクツ
MotoUP桶川スポーツランド