世界選手権の運営陣が、スペイン人とイタリア人のライダー数を減らそうとしているのは周知の事実だ。MotoGPクラスのエントリーリストを見ると、スペイン国籍が9人、イタリア国籍が6人。つまり、この2カ国だけでMotoGPライダー22名のうち15人を占めていることになる。これにフランス国籍2人、日本国籍1人、オーストラリア国籍1人、南アフリカ国籍1人、トルコ国籍1人、ブラジル国籍1人が加わる。
ラテン系ライダーの存在感は圧倒的だが、真に重要なのは彼らの卓越性だ。2000年以降、78人の世界チャンピオンのうち63人がスペイン人、イタリア人、フランス人である。過去10年間の世界選手権では、非ラテン系との比率が30対5になっている。確かにこの統計は純粋な実力主義の結果だが、かつての運営会社ドルナも新オーナーであるリバティメディアも、当時も今もこの状況をシリーズ人気の紛れもない成長ととらえている。
イギリス、ドイツ、アメリカ国籍のライダーがいないスポーツにおいて、MotoGPはレーシングファンにしか興味を持たれない。そしてまさにこれをリバティメディアは変えようとしている。スペイン人、イタリア人のMotoGP参入を抑制することは『新MotoGP』の指針の一つだ。たとえばグランプリ開催地を大都市圏に移転させることも同様だ。これはオーストラリアGPとアルゼンチンGPの開催地変更、そして今後の計画に明確に現われている。
リバティメディアの提案に賛成でも反対でも、MotoGPの下位カテゴリーを見ると『ヒューストン、問題が発生した』の言葉がぴったりの表現だ。
今季のMoto2には14人のスペイン人ライダーが参加している。セルジオ・ガルシア、イバン・オルトラ、ホルヘ・ナバーロ、アレックス・エスクリグ、ダニエル・ムニョス、マニュエル・ゴンザレス、アロンソ・ロペス、イサン・グエバラ、アンヘル・ピケラス、アロン・カネト、アルベルト・フェルナンデス、ダニエル・オルガド、ホセ・アントニオ・ルエダ、エイドリアン・ウエルタス。2026年シーズン開幕戦ではこのうち6人のライダーがトップ8入りし、上位4人はスペイン人だった…。リバティメディアが実力主義を『パスポート主義』に置き換えるつもりなら、その実現には困難が伴うだろう。とはいえ、リストに名を連ねるスペイン人Moto2ライダーの中には、国籍を理由にMotoGPクラスへの昇格を拒まれた経験を持つ人が複数いるのも事実だ。
一方、Moto3は恐らくリバティメディア幹部が夢見るシナリオだろう。他2クラスと比較すると、小排気量カテゴリーの多様性は圧倒的だ。確かにスペイン人ライダーが9名と多数派を占めてはいるが、最大12カ国もの異なる国政のライダーが参戦しているのだ! オーストリア、日本、イギリス、インドネシア、イタリア、マレーシア、ニュージーランド、南アフリカ、フィンランド、オーストラリア、アルゼンチン、アイルランド……。リバティメディアの関係者がうなずいている姿が目に浮かぶ。まさにそのとおり!
このMoto3のエントリーリストは、将来のMotoGPプロモーションにおける理想的なフォーマットであり、ドルナが過去数年、いや数十年にわたって築き上げた努力の結晶だ。Moto3ライダーはFIMジュニアMoto3世界選手権やKTMルーキーズカップでライダーとしてのトレーニングを修了している。彼らの大半はスペインに長期滞在し、イベリア半島全域で開催される地域選手権に参戦してきた。
そうなると、理論上はスペイン人であることが有利になるはずはない。彼らはみんなほぼ同じトレーニングを受け、世界選手権に参戦する前から同じサーキットでレースをしてきたのだ。だが…開幕戦タイGPでは上位10人のうち7人がスペイン国籍、2人がスペイン生まれのアルゼンチン国籍、そして1人はインドネシア人だった…。リバティメディアは解決不可能に見えるこの問題を、どう解決するのだろうか。
(マニュエル・ペチーノ)